垣田裕介の研究室

私の書籍管理法
――本オタク向け――

本の帯が破けて神経質になったり、過去の図書管理法に
後悔しているという友人に送ったメール(一部改変)。

◇更新:20070131


  <目 次>

    ■070129:本のカバー・帯の保管法
    ■070131:線引きとソフトカバー本



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■070129: 本のカバー・帯の保管法(070129)

○○さん

私は、帯付きで発売される本は、帯が付いていないと購入しません。
帯やカバーが、少しでもヤブレていたり、ヨレていても同様です。
新書でも文庫でも、いっさい妥協しません。
書店で手にとって納得できない場合は購入を見送って、他の書店で購入します。
見た目を確認することのできない××(インターネット)では、めったに購入しません。
また、古書の場合は、カバーや帯の有無を古書店に確認してから発注します。
函付きの本は函の有無も確認しますし、線引の有無も尋ねます。

帯を捨てる方もおられるようですが、私が帯を保管する理由は2つあります。
1つは、勉強・研究上のマトモな理由で、帯に書かれたフレーズが引用された論文を
以前に読んだ経験があり、帯を手元においておく必要があると思ったためです。
また、帯には、その本の概要やメッセージが端的に示されていることが多いため、
本の内容理解や後日の記憶復元などの参考になります。
もう1つは、趣味的な理由で、見た目の美しさへのこだわりです。
カバーと帯の配色のバランスが絶妙で、帯がなくカバーだけでは
どうもしまらない本もあります。
また、帯に書かれる内容は、増刷時や受賞時などにしばしば変化します。
全種類の帯を集めるために、同じ本を複数冊購入していた友人もいます
(岩田『戦後社会福祉の展開と大都市最底辺』、5775円)。

私は、「垣田式セロテープ5点留め」で帯を保管しています。私が開発しました
(他にも同じ手法を用いている方がおられれば、それはまったくの偶然です)。
画像を用いて解説します。
図1のように、まずは、カバーと帯の折り返された部分を2点留めます。
帯の端の部分をタテ向きのセロテープで留めるだけでは不安定なので、
ヨコ向きにも留めるようにしています。
これを左右で繰り返しますから、ここまでで4点留めることになります。


図1 「垣田式セロテープ5点留め」その1



次に、図2のように、背表紙部分を1点留めます。
(※現在は背表紙部分は留めていません:2013年5月1日追記。)
これは、セロテープを横向きに貼って、カバーのウラ側に折り返して留めています。
セロテープの切れた端のギザギザ部分は、ハサミでカットしています。
以上で5点留めとなります。


図2 「垣田式セロテープ5点留め」その2



この一連の作業に入る前に、私は、購入時のカバーと帯それぞれの折れ目を
伸ばして、カバー・帯の背表紙の文字が真ん中にくるように折り直します。
本の背表紙を眺めて、文字が真ん中にきていないと美しくありません。
また、折れ目が90度でないと、歪んで折れた部分が本の天地いずれかから
ハミ出してヨレるので、これも美しくありません。
カバー・帯を折り直して、折れ目のクセをしっかりつける必要のある場合は、
本を寝かせて、上から重い本を乗せておきます(『厚生省五十年史』など)。

以上、いくつか、<美しい>という表現を用いましたが、
いうまでもなく、何が<美しい>かは、人によって、あるいは時によって異なります。
私は、相当の回り道(失敗経験)をしたのち、この5年ほどは
「垣田式セロテープ5点留め」に落ち着いています。

ところで、○○さんがされているように、帯をカバーに糊付けする方法は、
私も以前に試したことがあります。
しかし、たいていのカバー・帯は、糊付けに適さない素材です。
いちど糊付けしても、しばらくするとハガレてくることがあります。
また、糊付けしやすい素材のカバー・帯でも、
糊の水分でカバー・帯がフヤケるため、大後悔した経験があります
(『欧米のホームレス問題』上巻、4725円)。

追記:
せっかく美しくカバーと帯を整えても、
本棚で本を出し入れする時に雑に扱うと、カバー・帯が傷つくことがあります。
帯については、特に本棚に入れようとする本が
棚の本の帯に引っかかってヤブレるおそれがあります
(私にはそのような失敗経験はありません)。
また、カバーについては、本体にカバーをキチンと揃えて本棚に入れないと、
次にその本を取り出す時に、本体の上(天)からはみ出したカバーに
指が引っかかって、カバーがヨレたりヤブレるおそれがあります
(私にはこのような失敗経験もありません)。




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■070131: 線引きとソフトカバー本

○○さんが後悔されているように、
私も、自分自身の大学院「入院」当初の本の扱い方には、
不満をもっています。しかたないですね。
その当時よりも良いと思える扱い方を、あとになって知るわけですから。
となると、いま満足している扱い方も、そのうち相対化されるのでしょうけれど。

私は、「入院」当初の本の扱い方について、
具体的には、主に次の2点を後悔しています。

1つは、ペンや万年筆による線引きです。
その当時は良いと思っていたものの、あとでページをめくると、
本の文字よりも赤ペンの線の方が目立って(目について)、
文字に集中できなくなってしまっています。
かといって、その当時は、鉛筆での線引きだと目立たないため、
赤ペンを選んだ記憶があります
(ボールペンだとダマができるので、水性インキ)。
しかし、この水性インキは、本の紙質によっては、
ウラに透けてしまうことがあります。
大分に来てからは、赤鉛筆を使ったりしていましたが、
いまは、鉛筆(シャーペン)を使っています(本体とクリップが丈夫な製図用)。
これだと、余白への書き込みと線引きが一本で済むので便利です。

もう1つは、ソフトカバー(並製)の本の開き方です。
たとえば岩波新書や二木『医療経済学』のような本は、
ページが背の部分で糊付けされています。
このような本は、全ページの真ん中あたりのページを
思いっきり開くと、背が割れてしまいます。
背が割れると、見た目に美しくないばかりか、
割れた箇所のページが外れることもあります。
特に古書の場合は、糊が劣化しているため、背が割れやすいです。
一方で、たとえば東京大学出版会や有斐閣のハードカバー(上製)の本は、
多くの場合、糸かがりといって、各ページが糸で綴られていますので、
力強く開いても、背が割れてページが取れてしまった経験はありません。
ただし最近は、他の出版社の本などをみると、
糸かがりでないハードカバーが多いです。
また、本は、ソフトカバーであってもハードカバーであっても、
背の部分に糊が使われますので、何ページかごとに
ページとページの間の背に近い部分が糊で引っ付いて
開きにくい箇所があります。
私はこれが気になるので、いつも慎重にはがしています。
しかし、無理にはがそうとして失敗することもありますので
(最悪の場合はページがヤブレたり)、ヤバそうな場合は素直に
あきらめます。

この2つ目についてまとめます。
私のソフトカバー本の扱い方は、2002年あたりから、次のような手順です。
まず、本体からカバーと帯を外します。
本体の表紙を上にして、天を奥へ、地を手前にします。
図3のように、表紙の右端(背表紙)から5ミリ程度の部分に
指のツメで折り目をつけていきます。


図3 ソフトカバー表紙に平行折り目を入れる



このとき、表紙にタテ方向に入る折り目が、背表紙のラインと
平行になるように(5ミリ程度を保つ)のが重要です。
次に、折り目にしたがって、表紙を折り返していきます。
表紙は厚紙ですので、気をつけないと、折り目を無視して
開いてしまいます。そうなると、開いてしまった箇所のページが
外れてしまうこともありますので、注意が必要です。
このように折り目をつける作業を、裏表紙でも繰り返します。
この折り目にしたがって、1ページ、2ページ、と順にめくって、
各ページに折り目をつけ、本全体にクセをつけていきます。
こうすると、ソフトカバーの本の背が割れずに保管することができ、
各ページがなめらかに開きます。
したがって私は、ソフトカバーを入手して、
その本の途中のある部分を読み込みたくても
(あるいはコピーをとりたくても)、
まずは表紙・裏表紙から順に折り目をつけたあとに、
使いたいページを開くようにしています。
急いで電車の中などで折り目をつけようとすると、
失敗することもあります。
私は、キチンといすに座って、机に本を置いて、
手を洗ってから(笑)、折り目をつけます。

さて、今日は社会政策学会の仕事で、京都の同志社へ行きます。
秋の学会のテーマ企画案を検討してきます。
まもなく小倉に到着です。



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